サマセミ2016特別講演「力也の話」

サマセミ特別講演にて、舞台俳優兼声優の小山力也さんの講演を聞きました。
コナンの毛利小五郎（2代目）や、24のジャック・バウアーの声の人、と言えば、聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか。
小山力也 - Wikipedia

好きなゲームキャラの声を当てている方なので、ぜひ行きたい！と、夫に頼んで行ってきました。

会場は広めの教室でしたが、立ち見どころか通路や教壇ギリギリまで人が座るほどの盛況ぶりで、高校生、大学生ぐらいの（オタクっぽい）学生でいっぱいでした。

小山さんは、俳優や声優を目指す若者たちに対して、「演じるとは」「センスを磨くには」という話を、熱く、時にコミカルにお話しされました。
白いシャツにグレーのストールをかけた、とてもカッコいいおじ様でしたが、時々熱が入りすぎて教壇の端から落ちそうになるハプニングもあり、少しドジっ子なところがちょいちょい笑いのスパイスとなっていました。

講座は参加者からの質問に答える形式で進んでいました。
学生たちのたどたどしい質問にも
「声優のどこがすごいと思ってるの？」
「演じるってなに？」
と、遮らずに真剣に聞き、どんどん深掘りしていたのが印象的でした。

「例えば悲しみを表現したい場合、ただ『悲しい理由』を話すだけでは説明になってしまいます。
感情には、行動が伴うはずです。
例え目配せひとつ、会話の間ひとつでも、その行動で感情や関係性が伝わってくる時がありますよね。
私は『雰囲気で伝えられる役者』を目指しています。」
という言葉は、小山さんの演じることに対する真摯な姿勢が伝わり、とても好感を持ちました。

どちらかと言えば小柄で細身の小山さんは、俳優として、自身の声質や体格にコンプレックスがあるようでしたが、それを謙虚さに変えて努力し続けている方という印象を受けました。
海外ドラマの吹き替えでも活躍されている方ですが、制作過程や、そこに関わる裏方さんのことまで思いを巡らせたうえで「畏敬の念を持って」（小山さん談）取り組んでいると仰っていました。

大学で演劇に出会い、偶然見かけた西田敏行さんの舞台から「色気とは何か」ということをつかんで演劇の世界へ入るきっかけとなったエピソードや、
仮面ライダーのサブキャラクターへの抜擢や、海外ドラマの吹き替え声優に選ばれたエピソードは、キャリア理論で出てきた「計画された偶発性」や「物語的真実」を感じさせる内容でした。

「冒頭でしつこく深掘りしていきましたが、
そうやって一つの物事をとことん突き詰めていく癖をつけることが、演技をする上でとても重要です。
また、そうやって考えたこと、思いついた事は、なんでも書き留めておきましょう。
人間は、若くてもどんどん忘れていってしまう生き物です。
『これだ！』と思う事を、一つでも二つでも蓄積していけば、やがてその積み重ねが個性という大きな財産となります。」
と仰っていました。

さらに、声優の仕事については、
「今、声優が携わる仕事にはいろいろな種類があるります。
スマホをはじめとする媒体の多様化で、今までハンデと思っていたことが利点になったり、逆に今まで無かった様々なハードルが増えるなど、声優の世界も変化していっています。
その中で、『自分がどんな事をしたいか』『どうなりたいか』の衝動ときちんと向き合うことです。
人間は、興味があることしかキャッチできないので、常にやりたいことにアンテナを向けていなければ、チャンスに気づくことすらできません。」
とおっしゃっていましたが、これはどんな職種でも当てはまることではないかと思います。

講演のあった日は、大好きなゲームの舞台版の、大阪講演初日でした。
「舞台版の役者さんたちに一言！」
と聞きたかったのですが、そんな一介のオタクが口を挟んでいい雰囲気ではなく、思わず聞き入ってしまいました。

声優の声の聞き分けができる「ダメ絶対音感」の持ち主ですが、声優さん自体にはあまり興味がありませんでした。
しかしこの講演を聞いて、もう一度手持ちのゲームで小山さんの声を聞きたくなりました。