オカンハック

母親目線での「便利!」を備忘録的に書き溜めていこうと思います。

「マーガリンは食べるプラスチック」は誤訳?!マーガリンが体に悪い本当の理由

最近、バターがめっちゃ高いですね。
昨年のクリスマスも、バターが店頭になくて、仕方がなくクリスマスケーキにマーガリンを使いました。
バターよりもホイップしやすくて扱いやすいのですが、食感までなんとなく軽すぎる感じがします。

クリスマスを控えるこれからの時期、ますます品薄になり価格も高騰していくことが予想されます。
農林水産省では、需要期のバター不足に備えて取り組みを行っていますが、どうなることやら。
今年もバター不足に警戒しておいたほうがいいんじゃないかな~と思っています。
バターの安定供給のために:農林水産省

さて、バターの代用でマーガリンを使う方も多いかと思います。
その時気になっているのが「マーガリンは食べるプラスチック」といううわさです。
本当にマーガリンは体に悪いのか、調べてみました。

マーガリンは体に悪いの?

マーガリンについては、
「プラスチックを食べているようなものだから、食べちゃダメ!」
という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

管理栄養士の成田崇信先生によると、「マーガリンは確かに体に悪い成分が含まれているけど、プラスチック(合成樹脂)とは関係ない。」ということです。
bylines.news.yahoo.co.jp

どうして体に悪いの?

そもそも、マーガリンの原料は、大豆油などの植物性油脂です。
その中に食塩や乳化剤などを混ぜて作ります。
www.j-margarine.com

植物性油脂の多くは、常温の状態で液体です。
それを固体にするために「水素添加」という化学反応により、含まれる油脂を不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸に変化させます。
この時に、トランス脂肪酸が副産物としてできてしまいます。
このトランス脂肪酸が、LDL(悪玉コレステロール)を上げやすいため、「体に悪い」とされています。
アメリカなどでは、トランス脂肪酸を規制する動きもあるようです。

なんでプラスチックって話になったの?

化学的には、名詞の「プラスチック」とマーガリンなどの「脂肪酸」は、分子構造や大きさが全く違います。
液体油脂から固体油脂を作るつもりで、うっかりできちゃうことは難しいかと思います。

ではなぜ、「食べるプラスチック」と噂されるようになったのでしょう?

上記の記事を執筆した成田崇信氏は、「英語の論文を誤訳したのでは?」と、推測していらっしゃいます。
粘土のように、力や熱を加えると形が変わってもとに戻らなくなる物質を「可塑性がある」と呼びます。
この「可塑性」のことを、英語で「plastic」といいます。
可塑性がない液体の油から、可塑性のある固体の油であるマーガリンになるので、英語の論文を誤訳したのではないか?というわけです。

そもそも、なんでバターが高騰しているの?

知らなかったのですが、バターは国で輸入量を統制している品目の一つです。
また、国内メーカーがおいそれと輸入できないように、30%以上の高い関税がかけられています。
なぜこのような統制を行っているかというと、国内の酪農家や乳産業を守るためです。

Q4.なぜ、バターは国家貿易で輸入しているのですか。
(1)国内の生乳生産について
 ~略~
(2)バターは需給の調整弁
こうした生乳生産と牛乳消費の季節変動から、夏期には生乳の需給がタイトになるため、バターの生産量を減少させ、
また、冬期には生乳の需給に余裕があるため、バターの生産量を増加させることにより、
国内の生乳需給のバランスを保っており、「バターは生乳需給の調整弁」として重要な役割を担っています。

バターはさまざまな食品の原料として使われ、また、バター製造の際に同時に製造される脱脂粉乳についても乳飲料(注参照)に使われています。
このためバター等が安価かつ継続的に輸入されると、国産のバター等の需要が輸入品に代替され、国産のバター等の販売先が無くなり、国内での生産ができなくなってしまいます。
そうなると、生乳の需給に余裕がある時期にもバターを生産することができなくなることから、国内では余裕を持った生乳生産が困難となり、
時期によっては、牛乳を製造するための生乳まで不足することになります。

(3)国家貿易の必要性
バターが国内の生乳需給の調整弁として機能するためには、無秩序な輸入ではなく、
①国内で不足する場合には追加輸入により輸入量を増やし、
②緩和時には輸入時期を調整するなど、
輸入の量や時期を調整する必要があります。
こうした運用は、関税の仕組みでは困難であることから、国家貿易により輸入を行っています。
こうした仕組みを通じて、バターが需給調整弁として有効に機能し、日本国内のバターだけでなく牛乳なども含めた牛乳・乳製品全体の需給の安定が図られています。

バターに関するQ&A

牛から搾った生乳(牛乳)から乳脂肪を抜いたものが脱脂粉乳であり、抜いた乳脂肪がバターとなります。
工程を反転させ、脱脂粉乳とバターと水をうまい具合に混ぜると、牛乳(みたいなもの)に戻すことができます。

生乳は日持ちせず、輸入することが難しいのですが、
バターや脱脂粉乳長期保存することができます
そのため、バターや脱脂粉乳を無制限に輸入すると、海外製の原料を使った牛乳を作れてしまう*1ので、日本の産業を守るために統制を行っています。

まとめ

マーガリンはトランス脂肪酸が含まれるため、避けたほうがよいというのは分かりました。
それを受けて、マーガリンメーカーもトランス脂肪酸ができにくい製法を研究しているそうです。
しかし、そもそも同量のバターを塗った時と健康に差が出るくらい、マーガリンをべったり塗るというのはいかがなものでしょうか(^^;)
プラスチックうんぬんより、まず、脂肪分の量を減らすべきでは……

個人的には、バターのほうが風味がよいため、可能であればバターをマーガリンに代用せずに使っていければと思います。
酪農家や、国内の自給率を守るため奔走していらっしゃる方には申し訳ないですが、
消費者としては、輸入だろうが国産だろうが、安全でおいしいものを安く安定して供給していただけるとありがたいです。
これは、他の農作物や加工食品でも同じです。

TPPにより、輸入する飼料の関税や、乳製品の関税が撤廃されることが予想されます。
これからの酪農は、そして、私たちの食卓は、どのように変わっていくのでしょうか?
国際政治って、遠いようで近いんですね。

おすすめ書籍

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*1:ちなみに、外国産チーズがOKなのは、チーズは牛乳に戻せないからです。