オカンハック

母親目線での「便利!」を備忘録的に書き溜めていこうと思います。

聴講ログ:AI時代を生き抜くキャリア形成~これから15年じゃ仕事はなくならないが、「働く」価値観は大きく変わる~

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AI時代を生き抜くキャリア形成~これから15年じゃ仕事はなくならないが、「働く」価値観は大きく変わる~ イベントページより

こんにちは、カーチャンです。
名城大学で行われた、海老原 嗣生 氏の講演「AI時代を生き抜くキャリア形成~これから15年じゃ仕事はなくならないが、「働く」価値観は大きく変わる~」に参加しました。

世間でには、AIで仕事がなくなるという話が広まっています。
ただ冷静に考えると、仕事は減るどころが増える一方。これって一体どういうことでしょう?

雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が、「なくなる」といわれる仕事を徹底的に取材し、また、「AIで仕事がなくなる」論文を原典にたどって周囲の研究者に意見を聞いた結果、答えが見えて来ました。

"申し込みページより"

イギリスのオックスフォード大学が「近い将来に現在ある仕事の90%は機械(AI)に置き換えられる」と公表したのが2011年。
AIは翻訳や画像認識などの分野で実用化されつつあるものの、10年経った今でも社会にそこまでの大変革が起きてるようには見受けられません。
スマホの方がインパクトが大きいですよね。)

これはどういうことだろう?
変化がないと言っても、水面下での変化は進んでいそうだし、このままノホホンとしていて大丈夫?ということで、家族で講演を聴講しました。

「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト

「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト

海老原さんの講演を聞きに行くのは、これで2回目です。
前回と同様、わかりやすく軽妙な語り口と広い知見から導き出される鋭い考察で、とてもエキサイティングな1時間でした。
okan89-blog.hatenablog.com

「市場価値のある人」が変化してきている。

昨今、過払金請求を代行する弁護士事務所が TV CM が増えています。
実は高学歴高収入の代名詞と言われる弁護士でも、収入がサラリーマン以下の「ワープア」が存在していると、海老原さんは言います。

今やコンピュータやAIの導入により、「記憶している知識量」「長年の経験によるカン」の価値は、相対的に昔よりも下がっています。

先日の「育休でJUMP!会」でいうところの、”技術的問題の難易度が、検索エンジンや診断システムの進歩によって下がってきた”と言い換えることができるかも。

先日離婚した知人も、弁護士には最低限しか頼らず、大半の手続きをネットで調べて自分で済ませたそうです。
そうなると、昔だったら下積みのワカゾーがやっていたような仕事はどんどんなくなっていき、
「ただ事務的に書類を作っていただけ」の人は、食いっぱぐれて高学歴ワープアに落ちていきます。

でも、ついそこを見落として、学歴・資格と、年収、更には人格と結びつけてバイアスをかけてしまいがちですよね。
子供が進路を選ぶとき、時代遅れの価値観で足を引っ張らない?
結婚相手を連れて来た時、ハロー効果がかからない?(ハイスペでもモラハラDV男はいる!)

このような、「就業の難易度・希少性と年収の相関」が崩壊する、というのが今回の講演のポイントです。

「AI化できる」と「AIにする」は別問題

これこれ。本当に。
「高いお金を出して食洗機を買って設置するくらいなら、自分で洗った方が速い!」
と、導入に踏み切れないご家庭と同じ。
我々ITエンジニアが言う「運用でカバー」というやつです。

ディープラーニングといい、ソフトウェアの開発費用って結構かかるし、使い物になる程度に学習させるためには、データを数万件以上集めて読みやすいように加工してあげなきゃいけないし、その計算ができるスパコンの維持・保守費もかかる。
システムの導入・ランニングコストより、人力でやった方が速くて安い、
そんな領域(大抵3K)はしぶとく残るみたいです。

また「人間がやることが価値」という感情労働は代替が難しいのではと言われています。
例えば、コンシェルジュ、保育士、ソーシャルワーカーなどです。

そして、都市部の宅配ドライバーやコンビニ店員のような「細切れの物理作業が多い仕事」も、機械(メカトロニクス)が追いついていないためしばらくは大丈夫とのこと。
(むしろ「できそうなところはだいたい機械化し尽くした」というのが正しい認識なのではと思います。)

ここではたと気付いたのですが、感情労働が主であり、細かい軽作業が多い労働って、「母親」もそうじゃん。
AIよ、赤ちゃんをあやしてよ。幼児のなぜなぜ攻撃の盾になってよ。
聞いていて軽く絶望しました。

聞いてて思ったんだけど、逆に社会的地位の高い人たちの仕事の方が、利権で守られるんじゃない?

「富める者はますます富み、貧しき者は持っている物でさえ取り去られるのである」―新約聖書マタイ伝13章12節―
ってさ。イエス様もシビアなことを言ってるよね。

ガチ勢かエンジョイ勢の二極化が進む

頭脳労働を代替するAIは、言い換えれば「ノウハウの外部化」に他なりません。
素人でもできてしまうということは、1つのところでコツコツと熟練する必要性が薄くなり、職業間での人材の流動化が進むのではと海老原さんは見ています。
また、労働を通じた自己実現の体験も得にくくなり、働くことの意義が変化し、よりワークライフバランスを取る方向に変化するのでは?との見方もあります。
流行りのベーシックインカムも、この文脈から発生するそうです。

反面、英語で論文を発表する時など、どうしてもAIでは追いつけない超一流の仕事は残るため、
ごく一握りのガチ勢と、大多数のエンジョイ勢に分かれていくようです。
「ガチ勢がいいエンジョイ勢が悪い」というわけではなく、それぞれ生き方が違うということになるようです。

ちょっと下記のABD読書会とリンクしますね。
okan89-blog.hatenablog.com

これさ、好きな道を選べって言うけど、本人がエンジョイでいいやと思っていても、エリートな親が許さないことも多いと思うし、ガチ勢に囲まれていたら、ガチが当たり前になってエンジョイの生き方が分からないわけじゃん。
ガチ勢ばかりに富が集中して格差が広がるとか、そう思ったようにいかないんじゃないかな?と、モヤモヤするんだよね。

格差解消のため、富の再分配をするのがベーシックインカムの目的なんだけど、その再分配をするのも権力者でしょ?
今の北朝鮮や、過去の共産主義国のことを考えると、ちゃんと分配されるのかちょっと不安だよね。

それに、「ガチorエンジョイ」って、一旦産休などでエンジョイに入っちゃうと、もうガチに戻らせてもらえなさそうだよね。二極化固定って、ちょっと怖いな。
「エンジョイもいいよ。ボチボチ仕事しても金が入ってくるってステキじゃない」って海老原さんはいうけど、
この間読んだ本の「相対的貧困」ってキーワードがずっと頭の奥で警告を発してるのよ。

結局、「周りより良いものを」「昔より良いものを」と、ハードル上げちゃうのが人間の業だよね。

あとさ、「熟練がいらない」っていうけど、体に覚えさせるしかない感覚や技能ってどうなるんだろう。
楽家って、胎児の頃からクラッシックを聞かせるっていうじゃん。
一見無駄な雑事や反復の中に、「職業病」と呼ばれる価値観の内面化や動作の半自動化が発生するような気がしていて。

脱サラして蕎麦屋を始めたのに、腕を壊して早々に店を畳む人のこと聞くよね。
あれも、下積みなしで始めるから、無駄のない力の入れ方が分からなかったり、必要な筋力がついてなかったりするから、って聞くよ。
頭脳労働であるIT業界でも、情報の学部出たのに「授業で何聞いてたの?」って人もいるしね。
結局「置き換わりやすい」って突かれやすい、頭脳労働の士業でも、知識さえあれば仕事ができるってもんじゃないよね。

本当にやりたいことに集中しよう

海老原さんが繰り返し言っていたのが、
「資格や肩書きに縋るな。本気でやりたいことを真剣にやれ。ということでした。

下積みや書類作成など、コア以外のところはAIで代替されつつあります。
言い換えれば、遠回りせず仕事のコアに触れられるということで、本当にやりたいことのためにAIを使いこなすことが、AIに仕事を奪われたりAIの操り人形にならない、真に人間らしい働き方になると仰っていました。

パソコンが普及してきた時と一緒ですね。
Excelが使いこなせなくて窓際に追いやられたおじさんもいたけど、Eメールや電子申請で業務の効率は格段に上がりましたね。

聴講して

正直、生半可にプログラミングやディープラーニングの知識があるため、
聞いていて「ン″ッ!?」っと引っかかる解説もありました。

特にAIの進化については、
「それ、汎用型AIしかできません。専門型AIでは無理だと思いますよ。」
「『100年先ではなく、15年先のイメージです。』と条件付けしていますが、仰っている技術は、15年程度じゃ一般化どころか実証化も間に合わないんじゃないですかね〜」
「AIどころか、情報化の前段階である定型化もできてなくて、属人で回してるとこも多いでっせーー」*1
と、内心ドキドキしながら聞いていました。

一般の方は、人工知能 = アトム、ドラえもん、マルチちゃん、ちぃ etc...のような人型ロボットのイメージがあるため、
「専門型(エキスパート)AI」という名前は、”専門家の役割”を丸ごと担うことを想起させるらしく、
必要なデータを渡せば必要な作業を行ってくれる、「職場の隅に座っている、特定業務担当の誰かさん」を当てはめがちなんですよね……

「仕事を奪う」というAIを、現在実証化しつつある専門型の発展系で想定しているのか、シンギュラリティを超えた汎用型AIで想定しているのか、海老原さんは(意図的なのか無意識なのか)混ぜて語っているように見受けられて、んー!!でした。
でも、海老原さんは雇用の専門家なので、AI実装の裏側の、泥臭いデータ収集とかトレーニングの作業規模、壁になりそうな箇所の面倒臭さなどを、ふんわりしか掴めてないのかも。*2
この辺りは、AIの専門家の意見を聞きたいですね。



ちなみに、「汎用型AI(人間っぽいAI)」が普及した社会がどうなっているのか?
労働代替に対する人間の葛藤や、人間性の問いかけ、どうAIと接するべきだろうか、というドラマが
現在放映中の仮面ライダーゼロワン」がめっっちゃ丁寧に描いています!!
www.kamen-rider-official.com

これはもはや、SF社会派ドラマ。
第1話からして、主人公のお笑い芸人「飛電 或人(ひでん あると)」が、お笑い芸人アンドロイドの「腹筋崩壊太郎」の登場でクビになるというストーリーとなっていますし、
直近の20話では、敵としてグーグルグラスもどきをかけた不動産営業マンが登場します。
これは海老原さんが講演で言っていた、「伝説の営業マンAIが常に横でアドバイスを出している」状態ですね。

お笑い芸人をクビになった或人は、祖父の遺言でアンドロイド製作会社の社長になり、暴走するヒューマギアが起こす事件を通じて成長していくというストーリーになっています。
荒唐無稽な「子供向け特撮ドラマ」ではありますが、バックボーンの取材がとてもしっかりしているのを感じます。
今回の講演を聞いて、「具体的に未来はどうなるんだろう」と思った方は、追っかけ視聴をお勧めします!
wired.jp

今回の講演の内容については、過去の著作を元になっています。
もっと深掘りしたい方は、こちらをお読みください。

ついでに、ゼロワンはいいぞ。
ルナシーのJとTMレボリューションの西川貴教が歌う主題歌もめっちゃかっこいいよ。

REAL×EYEZ(CD+玩具)

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*1:Courseraというオンライン学習サイトで、Google機械学習の講座を受講したのですが、1.Individual contributor (属人作業) 2.Delegation(他人に任せる = マニュアル化) 3.Digitization (コンピュータ化) 4.Big Data and Analytics (ビッグデータ)5.Machine learning(機械学習) というステップに従うことを、強く勧めていました

*2:先述のGoogleのオンライン学習によると、全体の作業時間の7割がデータ収集と学習モデルの作成です。